ドンドンドンッ!!ドンドンドンッ!!
「ザク! !起きて!!」「グレッグさん!!起きて下さい!!」
嵐のためいつも以上に堅く閉ざされているドアを必死で叩く。
「・ ・ ・んだよ、ったく。こんな嵐の晩に・ ・ ・」
ごく細く開けられたドアの向こうでザクは唸った。
「ザク!!ここ、開けて!!大変なんだ。人が!!」
無理矢理ドアをこじ開けてボクは叫んだ。
ザクがボクの指差した先に目をこらす。
「遭難か? !」
眠気も吹っ飛んだ様子でザクは叫んだ。
「こりゃ、大変だ! !」
ザクの大声のおかげでグレッグさんも出てきてくれた。
「何事だね・ ・ ・」
のんびりした口調は彼女の姿を捉えた瞬間、一瞬にして変わった。
「えらいことだ! !」
「ザク! !ドクター、呼んで来て! !グレッグさん、手伝って下さい! !」
叫びながらボクは今は使われていない海の家のドアをこじあけようとしていた。
「何やってんだよ? !病院まで運んじまえば早いだろーが! !」
「この嵐の中を動かすのは危険だよ! ! とにかく早く、身体、温めないと! !
冷え切ってる! !」
「それなら、とりあえずワシのウチでよかろう。さ、早く! !」
「でも! !そんなことしたら、グレッグさんの寝るところが・ ・ ・! !」
「バカ! !今、そんなこと、言ってる場合か! !」
ザクが荒々しくボクの背中を小突く。
「すみません、グレッグさん。お願いできますか」
「お前さんに謝られることでもなかろう。こら!ザク。 彼女を運んでから
行かんかい」
ザクと二人でなんとか彼女をグレッグさんのウチに運び込み、ザクは嵐の中を
病院へと駆け出していった。
「とにかく暖炉を目一杯焚いて下さい。それとお湯も沸かして」
「まかせておきなさい」
グレッグさんは年下のボクから指図されることを少しも厭わず、
テキパキと彼女のために部屋を整えてくれる。
「毛布か何かお借りできますか」
「構わんよ。何でも適当に使ってくれ」
キッチンに立ったままグレッグさんは振り返らず、声だけを返してくる。
とにかく濡れた服をなんとかしなきゃ・ ・ ・
なんとかって・ ・ ・脱がすしか、ない、よな・ ・ ・
ボクはなるべく彼女を見ないように顔を背けたまま、手探りで服を
脱がせようとした。
けれど・ ・ ・
だめだ・ ・ ・イマイチ、服の構造がわからない・ ・ ・
えっと・・・このボタンをはずせば・・・って、これ、飾りボタンじゃないか? !
じゃ、一体、どこだよ? !
ええい! !だめだ! !もたもたとこんなこと、やってる場合じゃない! !
早く身体を温めないと、取り返しのつかないことになる。
ボクは覚悟を決めた。
ゴメン! !一応、心の中で彼女に断ってから。
とにかく服を脱がすためにあちこち探ってみる。
あった! !これか。ようやく背中のファスナーを探り当て
濡れてピッタリと彼女の身体に張り付いているその布をなんとか剥ぎ取る。
一瞬、白い素肌が目に飛び込んできて、ボクは慌てて目を硬く瞑った。
あとは手探りで毛布を巻きつけて、腕と言わず、背中と言わず、
とにかくさすった。
次第に彼女の顔に血の気が戻り始める。
白いのを通り越して青ざめていたその頬にも、色を失くしていた唇にも、
ようやく微かに、やわらかな赤みがさし始めた。
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