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そうだ!こんなこと、してる場合じゃない。
ボクはまた、急いでキッチンに戻りクレアさんに声を掛ける。
「ごめんね。クレアさんも疲れてるでしょ。
後はボクがやるから座っててよ」
「え?あ、でも、ほんとにもう出来るから・ ・ ・
クリフくんこそ、座ってて」
「そんなわけには行かないよ。えっと、それじゃ、食器でも出そうか」
「ほんと?じゃあ、お願いしちゃおっかな」
そんなやり取りをリビングから眺めていたグレイが一言
「新婚さんみたいだよな」
ガッシャーン!!
硬直して持っていたお皿を全部、床にぶちまけてしまったボク。
「キャァーッ?!大丈夫、クリフくん?!ケガしてない?!」
ビックリしているクレアさんに
「平気だから。ごめん、驚かせて」
と答えつつ、グレイを睨み付ける。
「ね、ほんと、私一人で大丈夫だから。クリフくん、座ってて」
見るとクレアさんの顔も真っ赤だった。
割れたお皿の後始末を済ませて、しぶしぶリピングに戻る。
けど、なんだか落ちつかない。
どうしよ・ ・ ・いっそ部屋に戻ろうか・ ・ ・
でも、そんなことしたら、クレアさん、余計に気を遣うかもしれないし・ ・ ・
ボクは落ちつきなくソワソワと雑誌を手に取ったり、戻したり・ ・ ・
けど、そう言えば・ ・ ・グレイは随分とリラックスしてる・ ・ ・
緊張したりしないのかな・ ・ ・
新婚さんと言えば、グレイとクレアさんの方が、よく考えるとよっぽど
新婚さんらしくない?
かいがいしく夕飯の支度をする奥さんと、仕事の疲れを癒すように
ゆったりとくつろぐ旦那さん、って感じ。
「あのさ、グレイは緊張しないの?女のコがウチにいて・ ・ ・」
「なんで?別に。むしろ、いいよな、やっぱ。女のコがウチにいるって・ ・ ・
結婚したら、毎日、こんな感じなのかな・ ・ ・」
グレイは嬉しそうに、夢見る様に視線を宙にさまよわせる。
結婚したらって・ ・ ・それって・ ・ ・
ボクはきっと露骨に表情が変わったんだろうな・ ・ ・
そんなボクの表情の変化をグレイは少し、楽しんでいたようだったけど、
「心配そうな顔、すんなよ。クレアさんのことじゃないからさ」
とすぐに付け加えた。
へぇ・ ・ ・そうなんだ・ ・ ・
ボク、てっきりグレイもクレアさんのことが好きなんだとばっかり
思ってた・ ・ ・
「ま、クレアさんのこともかなり・ ・ ・だったんだけどな・ ・ ・
お前、見てると露骨でさ・ ・ ・あぁ、そうなのか・ ・ ・って
思ったらなんか・ ・ ・」
グレイは独り言のように言って・ ・ ・
「感謝してもらいたいけどな、オレとしては。お前のためにわざわざ
クレアさんに来てもらったんだからさ」
え?それって・ ・ ・
「時間、見計らって適当に消えてやるからさ、後はうまくやれよな。
他にもクレアさん狙ってるヤツいるみたいだし、あんまりモタモタやってると
他のヤツに掻っ攫われるゼ」
いたずらっぽいグレイの笑顔。
後はうまくって・ ・ ・
そんなこと急に言われても、ココロの準備が・ ・ ・
って、第一、クレアさんの気持ちも分からないのに・ ・ ・
「それはクレアさんも同じだろ」
グレイはまるでボクのココロを見透かしたように・ ・ ・
「クレアさんもお前の気持ち、分かんないだろ。どっちかが
リアクション起こさないとどうにもなんないんだぜ、こういうことって。
だったら、男の方から先に、だろ」
グレイの真剣な目。
「うん。ありがとう」
心配してくれるグレイの気持ちが嬉しくて。
なんの準備も出来てないけど、とにかく・ ・ ・
伝えてみよう、ボクのキモチ
・ ・ ・・ ・ ・君が好きです・ ・ ・・ ・ ・ ・
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