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「おはよー」
玄関で声がする。
う、そ・ ・ ・
まだ6時過ぎだよ。
何の用意も出来てないのに・ ・ ・
ビックリしてドアを開けると、ニコニコ笑顔のクリフが立ってる。
「ごめん。まだ、何も用意出来てないの。ちょっと、待っててくれる?」
「分かってる。手伝いに来たんだ。クレアのことだから、出掛ける前に
一日の仕事、全部やっちゃお、なんて思うだろうな・・・と思って」
クリフの言葉に胸がジーンと震える。
ちょっと目の奥が熱くなって・ ・ ・
「それに、クレアが毎日、どんな風に仕事してるのか知っておきたいしさ。
鶏に餌やるくらいなら、ボクにも出来ると思うんだけど」
優し過ぎる笑顔が、ちょっぴり怖かった。
幸せ過ぎて・ ・ ・
「こらっ!突っつくなよ。ボクは餌じゃないって!」
「うわっ!なんで頭に上ってくるんだよぉ!」
鶏の餌くらいなら、と言ってくれたクリフは、それまで
全く面識のなかった鶏達の思いがけない歓迎ぶりに、力一杯
振り回されて鶏小屋の中で悲鳴を上げている。
けど、叫んでいる割には案外、楽しそうで、逆に鶏達を追いまわしたりして
遊んでいるようにも見える。
私はそんなクリフを横目で見ながら、せっせと卵を出荷箱に運ぶ。
こんな風に誰かと一緒に仕事するのが、こんなに楽しいなんて・ ・ ・
去年の秋、クリフと一緒に果樹園でバイトしたときには、クリフはいつも
「楽しいね」って言ってくれてはいたけど、私は慣れない仕事で、結構、
大変だなぁ・ ・ ・なんて思っていたし、自分の牧場のことも気になっていて
正直なとこ、楽しいという感じでもなかった。
まだ、クリフともそんなに親しいわけでもなかったし・ ・ ・
でも、今は本当に楽しい。
こうして、クリフと二人でいられることが。
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