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「明日の土曜日、忙しい?」
果樹園の仕事が終わったその足で牧場によってくれたクリフは、
足元で雪まみれになってじゃれつくポロンの頭をなでながら、
白い息を弾ませて出し抜けに言った。
「うーん・ ・ ・牧場の仕事って休みがあってないようなものだから・ ・ ・」
私は言葉を濁す。
辺りはすっかり雪に覆われて、さすがに畑仕事はないけど、
家畜達の世話は一日だって欠かすことは出来ない。
それに、時間があれば湖の鉱石場に行って、鉱石掘りもしたいし・ ・ ・
畑仕事がない分、収入の方も心許ないし・ ・ ・
「ボク果樹園、休み貰ったからさ、デートしよっか」
今の今までポロンと遊んでいるんだとばっかり思っていたのに、
いつの間にかすぐ私のそばまで来ていたクリフは、全く不意に
私の顔を正面から見つめて、ニッコリ笑った。
ちょっといたずらっぽくて、けど、屈託のない優しい笑顔。
いつの間にか、こんな風に笑えるようになったんだね。
「ほんと?!嬉しい!!」
思わずクリフの腕にぶら下がるようにして掴まる。
「うわっ!!」
クリフはバランスを崩して、今にも転びそうになって、
逆に私に掴まってくる。
「キャァッ!!」
私にクリフの体重を支えられるわけがなくて、
私達は二人して力いっぱい地面に激突してしまった。
「いってー・ ・ ・」
「いったーい!!」
ほとんど同時に叫んで、顔を見合わせる。
そして、お約束の大笑い。
いい加減涙が出るくらい笑って・ ・ ・やっと呼吸を整える。
「じゃ、明日、迎えに来るね」
クリフは最後にとても嬉しそうに笑って、帰って行った。
そんなクリフの後ろ姿を見送りながら、急にドキドキしてきた。
デートしよっか・ ・ ・
あんな風にサラッと言われたら・ ・ ・恥ずかしがったり、
照れたりする方が変に思えちゃうじゃない・ ・ ・
もちろん、嬉しいんだけど・ ・ ・
でも、やっぱり、ドキドキする・ ・ ・
何着て行こっかな・ ・ ・
いつも、オーバーオールばっかりだから、たまにはうんとおしゃれして・ ・ ・
って、どこ行くのかな・ ・ ・
クリフ、何も言ってなかったけど・ ・ ・
私は明日が来るのが待ち遠しくて、ドキドキしながらその夜、
ベッドに入ったのだった。
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