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悲しい気持ちのまま、ベッドにもぐり込んで、
また、目がさめたら、今度は、目の前にランちゃんがいた。
「ごめん・ ・ ・起こしちゃった?」
ランちゃんは少し遠慮がちに微笑んで、私を覗き込むように言った。
「ランちゃん・ ・ ・来てくれたんだ・ ・ ・」
私の言葉にランちゃんは
「うん。クリフくんに頼まれちゃって」
と笑った。
でも、私にはその笑顔が、とても、痛くて・ ・ ・
だって、私、知ってる・ ・ ・
ランちゃんが、宿屋の娘として、お客様であるクリフくんに対して、
ではなくて、一人の女のコとして、クリフくんのことを、
とても大切に思ってるってこと・ ・ ・
いつも、クリフくんのそばにいて、クリフくんのこと、
誰よりも心配してるってこと・ ・ ・
だから・ ・ ・私は・ ・ ・
クリフくんがどういうわけで、私のことを看病してくれていたのかは
分からないけど、とにかく、看病してくれてて、
私はとてもビックリして・ ・ ・。
私のために馴れない料理までしようとしてくれて・ ・ ・
やけどまでして・ ・ ・
そんなクリフくんがとても、愛しくて・ ・ ・
思わずあんなこと、しちゃって・ ・ ・
クリフくん、驚かせて・ ・ ・
きっと、呆れられて・ ・ ・
それでも、私のこと、放っておくわけにもいかなくて・ ・ ・
それで、ランちゃんに頼んでくれたんだ・ ・ ・
でも・ ・ ・
クリフくんはランちゃんの気持ち・ ・ ・
気付いてない・ ・ ・のかな・ ・ ・
ランちゃん・ ・ ・ごめん・ ・ ・
私がヘンなこと、しちゃったばっかりに・ ・ ・
ランちゃんにまで迷惑かけて・ ・ ・
「え・ ・ ・と、女のコの方がいいんじゃないかって
クリフくんが・ ・ ・」
私、多分ヘンな顔、しちゃったんだと思う。
ランちゃん、言い訳するように・ ・ ・
「あ・ ・ ・ありがと・ ・ ・ごめんね・ ・ ・ランちゃん、
色々と忙しいのに・ ・ ・」
とにかくお礼、言わなくちゃ・ ・ ・
「そんなこと心配しないで、早く元気になって」
ランちゃんはいつもと全然変わらない笑顔で、そう言ってくれる。
強い・ ・ ・
ランちゃんって、強いんだ・ ・ ・
ほんとは・ ・ ・たぶん・ ・ ・
ううん・ ・ ・きっと・ ・ ・
嫌、なんだと思う・ ・ ・
私の看病なんて・ ・ ・って言うか、
クリフくんから他の女のコの看病、頼まれるなんて・ ・ ・
もし、私だったら・ ・ ・
やっぱり、複雑・ ・ ・
淋しいし・ ・ ・悲しいし・ ・ ・切ないし・ ・ ・
つらいし・ ・ ・悔しいし・ ・ ・
なのに・ ・ ・こうして、来てくれて・ ・ ・
笑いかけてくれる・ ・ ・
私なんかと違って・ ・ ・
強いヒト・ ・ ・
「何か食べられそう?熱があるみたいだから、アイスクリームとか
冷たいものの方がいいかな・ ・ ・それとも、おかゆとか温かいスープ
みたいなのがいい?」
ランちゃんの優しさが、今の私には・ ・ ・苦しい・ ・ ・
苦しい、なんて言ったら、バチが当たる・ ・ ・
けど・ ・ ・
お願いだから、そんなに優しくしないで・ ・ ・
「ごめん。食欲、ない?」
私は首を横に振った。
違う・ ・ ・
違うの・ ・ ・
涙が頬にこぼれる。
ランちゃんはとてもビックリしたみたいで、何て声を
かけていいのか、困ってる・ ・ ・
「ごめ・ ・ ・ん・ ・ ・」
涙で言葉が詰まる。
「ゆっくり休んだ方がいいよ。クレアさん、頑張り屋さんだから
疲れが出たんだよ、きっと・ ・ ・」
ランちゃんは私の心をなだめるように、とても優しく、言ってくれる。
「ありがと・ ・ ・」
他には何も言えなくて・ ・ ・
私はまた、目を閉じた。
ランちゃんは・ ・ ・クリフくんが・ ・ ・好き・ ・ ・
そして・ ・ ・私は、ランちゃんが好き・ ・ ・
だから、クリフくんがどう思ってるのかは分からないけど・ ・ ・
ランちゃんは私なんかより、ずっと、ずっと素敵な女のコだから・ ・ ・
きっと、クリフくんも好きになって・ ・ ・
いつか、私も二人のことを・ ・ ・
祝福してあげられる・ ・ ・
そう、なりたい・ ・ ・
だから・ ・ ・クリフくん・ ・ ・
ランちゃんの気持ち・ ・ ・早く、気付いてあげて・ ・ ・
でないと・ ・ ・私・ ・ ・
だんだん・ ・ ・
自分の気持ち・ ・ ・押さえられなくなる・ ・ ・
どんどん・ ・ ・
どんどん・ ・ ・
膨らんで・ ・ ・
自分でも・ ・ ・止められなくなる・ ・ ・
だから・ ・ ・
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