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「よぉ、吾郎。ちょっといいか?」
「ん?拓哉兄貴。何?」
「ちょっと面白ぇブツ、仕入れて来たんだけどよ、一緒にビデオ鑑賞としゃれ込まねぇ?」
「まーくんはもう寝たの?」
「おうよ。ちゃあんと寝かしつけて来たって。その辺は抜かりねぇよ」
「それにしても、拓哉兄貴もほんと、好きだよねぇ、そういうの」
「お前だって嫌いじゃねぇだろ?」
「ま、そうなんだけどさ」
「今更、俺の前でまでカッコつけよう、とか思うなよな」
「そんな事は思ってないけどさ」
「ちょっと気分転換とか、どうよ?」
「え?」
「1時間ぐれぇ前から10分おきぐれぇの間隔で紅茶、入れ替えに降りて来てただろ?」
「あぁ、・・・・・・うん」
「だからよ。ちょっと気分転換した方が良くねぇ?」
「バレてた?実はちょっと煮詰まっちゃってんだよね。こう・・・頭の中にはイメージする
モノがあるのに、それが明確なビジョンになって出て来ないって感じって言うかね・・・・」
「あ、いや、具体的な説明はいんねぇけど。ひょっとしたら、案外、ヒントになっかも
知んねぇし」
「いや、まぁねぇ・・・・方向性は違わなくはないかも知れないけど・・・・そういう
即物的なストレートなやつじゃなくて、もっと、こう・・・オブラートに包んだ感じ?
女性が読んでもさ、ちょっと性的興奮をそそられるようなさぁ・・・・」
「わーった、わーった。薀蓄はいいから。ほら、さっさとセットしろよ」
「うん」
「あ、ビール。1本ぐれぇは平気だろ?」
「あぁ、うん、大丈夫」
「そんじゃ、乾杯」
「・・・・・・ふぅん・・・・えっと・・・あぁ、そっか・・・こういう感じ・・・?」
「って・・・おい?ちょっ・・・吾郎っ?!おまっ?!おいっ!!ちょ?!ヤメ・・・・」
「えっ?!・・・・ぅわっ?!拓哉兄貴っ?!な、何でっ?!」
「何でって、お前がいきなり仕掛けて来たんだろぉがっ?!」
「・・・え?」
「って、今更、赤くなんなっ!!こっちが恥ずかしいだろぉがっ?!」
「・・・・・ごめん」
「おまっ?!今、完全に思考回路、小説の世界の方に持ってかれてただろっ?!」
「・・・・うん・・・いや、危なかったぁ・・・俺、もうちょっとで拓哉兄貴と
そーゆー事するとこだったじゃん?」
「って、何、いきなし冷静になってんだよっ?!」
「って言うかさ・・・拓哉兄貴もさ、何でこんな状態になるまで抵抗しなかったの?
拓哉兄貴の腕力だったら、俺を払い除けるなんて事、簡単なはずでしょ?」
「あ、いや・・・それは・・・・」
「それは、何?」
「いや・・・、ま、その・・・・ちょっと興味あったっつーの?お前、オンナとヤる時、
どんな風にヤってんのかなぁ、とか?」
「悪趣味ぃ・・・・・」
「けど、さすがにな、ま、この辺が限界?」
「限界感じてくれて良かったよ。兄弟で近親相姦で、そっち方面とか勘弁して欲しいもん」
「ったく・・・・大体、お前がマジメな顔して、いきなし、小説の世界に思考回路、
持ってかれんのが悪ぃんだろっ?!」
「・・・・はははは」
「笑って誤魔化すな。お前ってオンナとヤってる最中とかでも、何かネタ閃くとそっちに
気ぃ取られてそうだよな」
「あれ?やっぱり分かる?」
「は?」
「この前もさ、ほんと、かなりいい線まで盛り上がってた時にさ、いきなり、閃いちゃって、
裸のままさ、パソコンの前に座ったら、ドライヤーで頭、殴られてね、そのまま、バイバイ
されちゃって」
「いっ痛ー・・・・っ」
「でさ、さすがに反省して、それから後は閃いても一応、ちゃんと最後まではシようと
思って・・・・・けど、折角、閃いた事、忘れたくないじゃない?で、必死で頭ん中で
それ考えながらシてたら、噛みつかれて・・・・」
「げっ・・・」
「えへへ」
「えへへ、じゃねぇよ。殺される前に止めとけよ、その癖」
「ほんとにねぇ」
「分かってんのかよ?!」
「分かってるって」
「どうだか・・・・・」
「そんじゃ、お互い、その気が削がれた、って事で、今日のビデオ鑑賞はこの辺にしとく?」
「また、面白ぇモン仕入れたら、持って来てやんよ」
「ご好意に感謝します」
「これから、また、仕事か?」
「まぁね。兄貴は?明日は朝、早い?」
「いや、定時」
「じゃあさ、悪いけど・・・朝の仕度とか頼んでいい?」
「任しとけって」
「宜しくお願いします」
「んじゃな。仕事、頑張れ」
「ありがと」
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