『光』
ずっと闇の中でうずくまっていた。
償うことの出来ない過ちを犯してしまった痛みは
心に埋めることの出来ない大きな穴を開け
大切なものを失ってしまった悲しみは
目を覆い光を見失わせた。
色も匂いも味も・・・・・
五感をなくしてしまったように
すべてが無味乾燥で、ボクは自分が生きているのか
死んでいるのかすらわからなくなっていた。
けれど・・・
そんなボクに彼女はいつも笑顔で話し掛けてくれた。
時には酷く強引に、時にはとても優しく、
時にはとても無邪気に、時には本気で怒り
色んな顔を見せながら
何度も何度も
繰り返し繰り返し
ボクに手を差し延べてくれた。
モノクロのフィルムのような世界に色が戻り始め、
季節の移ろい行く匂いを感じ、
口にするものをようやく美味しいと感じられるようになったとき、
ボクは気付いた。
自分が再び光の中にいることに。
今、目の前で微笑む君がボクの光、そのもの。
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