幼稚園っつーとこへ 行き出して 1ヶ月。
まーだいだい どんなことするかとか
どんなやつが居るかってことは わかってたはずだった。
あの日がくるまでは。
違うクラスに居る吾郎とは
一緒になるっつーのは たまーにせんせの気まぐれでやる
共同お遊戯の時間ぐらいしかなくて。
あんま 少ねーから
こないだ つい やっちまった。
「ねぇ〜 せんせ。」
「なぁ〜に 拓哉くん?」
「前にえんちょーせんせ 言ってたよね?
『たくさんのお友達を作ってくださいね』って。」
「うん。拓哉くん いーっぱいお友達出来たでしょ?」
「うん。でもね でもね 俺ね もーっとお友達作りたいんだよ〜」
「それはいいことね。」
「だからね 他のクラスとも もーっと遊びたい!!」
「うーん。 じゃ 他のせんせ達とも相談してみるね。」
俺ね 知ってんの。
担任のトモコせんせが俺のこと すっげー気に入ってくれてんの。
だから ちと 甘えてみちゃいました。
だって "使えるものはせんせーでも使え"っつーじゃん。
で やっちゃってくれた訳よ。
頑張っちゃってくれた訳よ トモコせんせー。
「今日は桃組さんと黄色組一緒に運動しますからね」
へへっ これで この時間ずーっと一緒じゃん。
吾郎に。
でも ついてくんだけどね 悪魔が。
ま それはいいもん。
俺 ちと 運動とか自信あんだよね。
俺のかっけーとこ 見たらさ 吾郎も俺のコト・・・。
ちっちゃな講堂に マットと跳び箱が並んでて
そこを前転したり 跳んだりするって
俺にとっちゃ 朝飯前な運動で。
「じゃ 拓哉くん やってみて?」
お見本ってことで 俺がやることになって。
みんな見てるっつーコトは
吾郎も見てる訳で。
スタートに立って ちらっと吾郎の方見てたら
あいつが悪魔が 話しかけてやがって。
思わず こっからダッシュかけて 「てめぇ〜」と言いたいのを
飲み込んで ダンって床蹴って 跳び箱へ。
綺麗に跳び箱跳び越えて マットへの着地も完璧で。
"すごーい!!"って歓声と拍手。
その中には あの黒瞳をキラキラさせて パチパチって手叩いてる吾郎が居て
それだけ 満足な俺。
そこへ
「俺だって 出来る!」の声。
やっぱ 出て来たなと。
来ると想ってたんだよなぁ〜。
「じゃ 中居くん やってみて。」
「はぁ〜い」
列へと戻る俺とすれ違い様に
「見てろよ」と捨て台詞残して行きやがった・・・。
その言葉通り
こいつも 綺麗に跳びやがった。
慌てて 吾郎見たら 俺ん時より 嬉しそうな顔して。
俺を「どうだ」とばかり見る中居の顔が悔しくて。
そんな顔見たら負けず嫌いの俺に火がつかない訳はない。
もっとすげーことをと想ってたら
「じゃあ 2つにわかれて やりましょうね」ってせんせの声。
ちぇっ。
でも 同じとこに吾郎の後ろに並べば 話せるっつーの気付いて
猛然とダッシュしたのに
それを先に読んだ中居が 吾郎の手掴んで
「こっちにするべ」って すんでのとこで連れて行きやがった。
慌ててそっちへ行こうとしたら
ドンって何かにぶつかって。
「つぅ〜 てめぇ ちゃんと前見ろよな」
「あ・・・ごめんなさい。」
ぶつかった奴は 細くて色白くて。
今にも泣きそうな顔で立ったまんまで。
「・・・どけよっ!」
そいつを押しのけて行こうとしたら
せんせに手掴まれて
「拓哉くん 剛くんが『ごめんなさい』したのに
拓哉くんは言わないのかな?」って。
いや 俺 それどこじゃねーんだけど・・・。
でも それは言えない訳で。
ニコニコしながらも しっかと俺の手を掴んでるせんせの手に
力が入ってんのも感じて。
「・・・・ごめんなさい。」
「よく 出来ました。」
おかげで 俺は あっちの列には入れなかった訳で。
横目で 2人の姿を追ってたら
聴こえた声。
「・・・・ごめんね 僕のせいで。」
それはさっきの白いやつ 剛ってやつで。
「はぁ?」
「だって あっちに行きたかったんでしょ?
僕がぶつからなかったら 行けたのに。」
「・・・いっから。」
「ホントに ごめんね。」
ほわほわした顔で
ほわほわした声で言われたら
俺も怒る気が失せて。
そのまんま おとなしくつまらなく 運動の時間が続いてて。
「じゃ 飛べるチームさんと もう少し頑張ろうチームさんに別れましょうね」
ってことで 振り分けられて。
はぁ・・・そーいう分け方したら
吾郎と離れて 一緒なのはこの悪魔で。
それも 前後ってどーよ?
「なぁ?」
「・・・・・・。」
「お前さぁ なんな訳?」
「何が。」
「どして 俺の邪魔ばっかすんの?」
「邪魔? 俺も出来るから言っただけだけど?」
ごもっともなご意見で。
黙ってたら 逆に
「なぁ?」
「んだよ?」
「お前ぐれぇ かっけーなら 言い寄ってくんだろ?」
「はい?」
「今も おめぇのこと 熱く見つめちゃったりしてんべ
あそこの女子」
いや それとこれとは別。
「じゃ お前は どーよ?」
「俺が聞いてんだけど?」
「理由いんの? ってかさ お前 なんな訳?
吾郎の何?」
「一緒に飯喰って 一緒に風呂入って
一緒の布団で寝ちゃう仲。」
次の瞬間 俺はこいつの首根っこ掴んでて
こいつも 俺の首根っこ掴んでて。
で 結果は
講堂の隅っこに2人連れてこられてのお説教大会。
それが終わったと同時に
"吾郎と楽しい時間を過ごす"はずだった 共同運動の時間は
終りを告げるチャイムと共に終わっちまった。
「・・・・てめぇのせいだかんな。」
「うっせーよ。」
お互いのクラスへ戻る前に せめて一言吾郎と話そうと想って
吾郎を探した瞬間 眼に入ったもの。
それは俺の隣にいたこいつも同時みたいで
「「ああっ!!」」
その声と共に 2人で吾郎の元へダッシュして。
「「・・・なんだよ これ」」
吾郎の隣に居たのは
俺でも 一緒に説教くらってた こいつでもなく。
「あ 剛くんだよ。
中居くんと木村くんがせんせとお話してる時にね
色々お話して 仲良くなっちゃったんだ〜
ね 剛くん。」
「ん。ずっと 吾郎さんとお話したなぁって想ってたんだけど
怖い人達が居て お話出来なくて。
で 跳び箱跳ぶの ちょっと苦手そーだったから
一緒に練習したんだよね〜」
2人見つめあって なーに語ってんだよぉ〜
それに それに "怖い人達"って?
それは 今 隣で すっげー眼つけてるこいつだけだろが!
んだよ そののほほん空気。
って想ってたら 俺の腕 ツンツンって突いてきた。
「・・・なに?」
「一時休戦」
「はぁ?」
「お前との勝負はお預けってこと」
「お預け?」
「ああ。 今は こいつだろ?」
目の前で2人だけののほほんワールドを作ってる元凶。
「ラジャ!」
俺と中居は 最強タッグを組む事になった。
しかし 俺等は この のほほんなやつ 剛が
とんでもなく 最強な敵だということに気付くのは
もっと先になるとは この時は想いもしなかった・・・・。
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